不動産から見た景気の現状
2007.11.11
土地神話が云われたバブルの時代、不動産は安全確実な資産でした。それは、毎年値上がりして決して損をする事がない資産でした。
しかし現在の不動産は、値下がりリスクのある資産となりました。
その理由はいろいろ考えられますが、要は経済構造の変化、国際化、そして大きな問題は日本の国力の衰退が影響しています。
それでもバブル後下がり続けた地価も、東京、名古屋など大都市圏を中心に特にこの2年間大幅な値上がりを示し、一部の地域では平成3年につけた最高価格を回復、あるいは上回る上昇をしているところもありますが、地方圏では、過去の価格にはるかに及ばない地域が殆どでかつての高値に戻るなどという事は考えられない、というのが現状です。
昨今は格差の時代といわれますが、実は不動産についても大きな格差が出来ています。
東京銀座の地価上昇にくらべ、少し郊外の地価上昇はそれほどでもありません。かつては多摩ニュータウンに代表される大規模団地が生まれ、次々と家や学校が建てられ、駅前にはデパートが立ち並び、鉄道により都心へ通勤する時代が長く続きました。今、高齢化と少子化の波にさらされ、リタイア組を含め都心のマンションに移り住む時代となっています。その結果、郊外の地価が都心ほど上がらないのだと考えます。
本年7月の基準地価ですが、全国平均で商業地は+1.0%で昨年の△2.1%からプラスに転じています。実に16年ぶりの上昇です。住宅地も昨年の△2.3%から今年は△0.7%にとどまり、ほぼ下げ止まりになっています。3大都市圏の商業地の上昇は顕著で、東京都では前年対比17.2%アップとなっており少々上がりすぎかも知れません。昨今の不動産向け融資規制と相まって一時的な値下がりも考えられます。それでも、都市圏での経済活動が活発で収益が見込める中心市街地は、将来的に更に値上がりすると見込まれます。
一方地方圏は、商業地の83%が値下がりする(一番地価が下がった所は北海道夕張市)など思わしくありませんが、岡山なども中心部の売物件が殆んど無くなり、売買があっても路線価の2倍以上という事例が目立ち、利用価値のある土地については下げ止まりから上昇へ向かうものと考えます。
次に、不動産の価格決定はどうあるべきかを考えてみたいと思います。
収益物件の不動産価格は、「収益÷還元利回り」が原則です。
仮に1000万円の収益があるビルで還元利回り5%と考えると、このビルの価格は2億円です。還元利回りは国債利回り+リスクプレミアムで、今現在最も安全と考えられる国債利回りに投資リスクを上乗せしたものです。
これは土地を最大限有効利用(建物を建てる、駐車場にする、農地で利用する)して、そこから上がる収益の多寡でその土地の値段を決める、極めて合理的な考え方です。欧米では一般的ですので、日本も早晩、土地査定の主流になってきます。
さて、国債利回りの話が出ましたが、日本の公債発行残高は800兆円とも云われGDPの1.5倍を超えて、先進国では類を見ない状況です。そんな中、2010年には国債の大量償還が始まるそうです。今のままだと当然長期金利が上昇し、国債の暴落が始まると考えられます。インフレの足音が近くに聞こえてきます。
インフレとなりますと、当然現金・預金の値打ちが下がり、逆に実物資産である物の価値が上がることになります。現在は物を持つよりも現金や預金が強い時代が続いていましたが、そろそろ潮目が変わる時期にさしかかったようです。最近の原油の値上がり、金や穀物の高騰は、資金の実物資産への逃避が始まった結果で、この傾向は続くものと考えられます。そしてインフレ時代が来るとすれば、実物資産である土地や建物の価格は当然上昇するので、資産防衛上も大変安い値位置にある不動産はまたとない買い場であるとも考えられます。
景気の話ですが、トヨタ、新日鉄や任天堂に代表される日本の大企業の業績は素晴らしいもので、法人税収も当初見積りから大幅改善されています。ところが、一般国民に好景気の実感がないのはどうしてでしょうか。名目成長率が伸びないからです。つまり一般の勤労者の給料が上がらない事に原因があるようです。デフレが続いている事と共に株価低迷も一因です。
20年前のブラックマンデーを経験した東京市場は、1989年末に3万9千円の史上最高値をつけ、現在1万6千円台と長期低迷しています。一方ニューヨーク市場は当時2000ドル台だったダウが現在は1万3千ドルとなり、米国民の資産形成に大いに役立っています。
世界は“貯蓄から投資へ”が潮流となっていますが、我が日本では、証券税制改訂が云われています。株式市場は企業の資金調達の場です。外国人投資が54%を占める今、投資を否定するような政策は、金融立国を目指す日本にとっていかがなものかと思います。
政策といえば、建築基準法が改正されて、建設業界は大混乱になっています。姉歯事件後、耐震規制が厳しくなったことはやむを得ないのですが、その運用が余りに厳しく、建築確認のストップが相次いでいます。
以前は申請書類提出後でも窓位置変更など、構造計算に支障のない変更は修正出来たのに、最近は構造計算に関係がなくても最初から手続きやり直し、再申請が要求されます。
時間がかかる上に申請費が倍かかる事になり、役人の責任逃れの姿勢が災いして、前年対比で建築着工棟数が実に44%減となっていて確実にGDPを押し下げます。
しかし一方で、建物の償却が100%可能になるなど良い改革もあります。
また銀行の不良債権の償却が進み、8.4%あった不良債権比率が今は1.5%に改善され、貸出しが進むようになりました。
政策次第で日本はいくらでも良くなる資質を備えているという一例です。
ところで、中日ドラゴンズが実に53年ぶりに日本一になりました。
名古屋ドームでの最後の試合、完全試合達成まであと1イニングという山井投手を交代させた落合博満監督に非情采配だと非難が巻き起こっています。
この交代についてはいろいろ評価があると思いますが、批判を承知で交代させた落合監督の決断と、想像を越えるプレッシャーの中で見事救援に成功した岩瀬投手に拍手を送りたいと思います。
日本郵船という会社はリスクを取らない経営で有名でした。一方商船三井は敢然とリスキーな投資を行いました。今、両社の差は明らかです。
かつて世界の富を牛耳ったイギリスは長い斜陽の時代を経て、現在、世界最大の金融市場シティーを擁する金融大国となっています。
100兆円を超す国有財産を持ち、1500兆円と云われる個人金融資産を有する日本とて、この莫大な資産を一部でもうまく運用出来れば、借金大国・日本はたちまち生まれ変わり、再び希望にあふれる良い時代がやって来るはずです。日本はこの資産を生かさない手はありません。
落合監督はリスクを取って日本一になりました。
リスクを取らずに、大きな果実を得る事は出来ません。
ぼつぼつ我々日本人自身が変わらなければならない時代になったようです。

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